台風様に最大限の皮肉をこめてこの文章をささげます。その2

「その言葉そのままお返ししますよナガイさん。ナガイさんあれですよね?台風が来ると理由もなくテンション上がるタイプですよね?」
「なんの皮肉にもなってないわそれ」
色気も女らしさなんて言葉も一切含まれない仕草で煙を吐き出し吸殻が綺麗に陳列された灰皿に灰を落とすナガイ女史。全く本当に非喫煙者には実に厳しい集団だ。
「もちろんそんなつもりは全くないですよ。思ったことを思ったまま言っただけです」
「ほぉ、続けてみ?」
「遠慮しときます」
「つまんねーなぁおい」
ナガイ女史は本当につまらなそうに言い放った後に吸い終えた煙草を揉み消す。そして吸殻を綺麗に陳列された吸殻群の一端に加える。
「でもまぁ、シマ君が想像以上に早く来てくれたのは助かったわ、フジイ君が戻って来たら打ち合わせ始められるからねー」
「フジイ先輩もう来てたんですか」
「おう、家まで帰る時間ないから仕事終わってから直だってさ、さっきまで遅めのディナーを取って今買出しに出てる」
「つまり、ナガイさんは職場から夕食取る時間も含めて早めにここまで来たフジイ先輩よりも早くいらしていたと?」
フジイ先輩は文字通り僕の先輩だ。もちろん愛すべき非喫煙者でもある
「そーゆー事。家ここから近いんだわ、うん、今度から打ち合わせここでやろうか?」
「好きにしてくださいよ」
つくづく自分勝手なお方である、雨風強いから自分の家の近場で打ち合わせをしようという魂胆なのだろう当然。そもそもそれならば自分の家に集合!とか言ってしまえば良いのであろうか?それともアレか、常々自らに不満を抱いている男性、具体的には僕なのだが、そんな輩を自分の部屋には入れようとしない至ってノーマルな女性らしい部分なんてものを実は持っていたのかこの人は?もちろん僕だって大人だ、口にした瞬間目の前の灰皿が飛んでくるような事は間違っても口にはしない。これでこそ紳士だ、侍なのだ、日本男児なのだ。
「それで、フジイ先輩が戻ったら、って。今夜は僕とフジイ先輩しか来ないんですか?」
「おぅ、サキさんは駅、直行便関係の打ち合わせ、そんでタカノ君は業者。ルイとクサノは現地入りしてもらってる。私という名の本部の補佐はさ、経験も実力もない君とフジイ君でけで十分なわけだ」
「はぁ、そーゆー事で僕とフジイ先輩だけなんですね」
最悪だ。こんな状況だからこそ一致団結しているのかどうかはわからないが、既に皆動き始めているのが最悪だ。グッバイ引きこもり3連休。コンニチハ地獄の3連休。
「シマ君さ、ここに来た時からさ、くそっ!台風来てるというのに強行するつもりかよこのクソ女が!最悪だ!本当にもう最悪だ!って顔してるけどさ、もしかしてこのまま強行、とか思ってるわけ?」
「違うんですか?雨風に打たれて中止にするようじゃあ先代が築き上げてきた伝統を壊すことになる、って先週から息巻いてたじゃないですか。自分で言った事忘れちゃったんですか」
「いや、確かに言ってたけどね、それでこんな状況になってまでも強行、という事とは別問題なのさ、わかる?」
「はい?」




              続くよ!